手を伸ばした先にいるのは誰ですか




「北海道の企画、どこもメニューが出揃いました」
「そこまでがダブルリバーの仕事だ。北海道の支配人に引き継ぎ出来るか?」
「…ダブルリバーって…普通に使ってるの?」
「‘川崎さんと美鳥’と言うより短くていいんじゃないか?」
「大した時短にならないよ」
「ふっ…時短どころか、ダブルリバートークしてる分ロスだよな」
「ダブルリバートーク…してません。はい、えっと…支配人に引き継ぎます。美味しそうなメニューが出来たここまでは川崎さんにも送ろう…っと。ダブルリバーの任務完了です…って…ダブルリバー使ってしまった…失敬」
「美鳥様」
「わっ…びっくりした…西田さん、何?」

自分のパソコンと静かににらみ合いを続けていた西田さんが急にこちらを向いて呼ぶから驚いた。

「今の失敬はおかしいです」
「はぁ…西田さん、ありがたいご指摘ですけど巨額を動かしておられるのでは?私の話を聞いていては…」
「大丈夫です。聖徳太子並みとは言いませんが、何をしていても美鳥様の言葉チェックは出来ます」
「…はい。You're super!!」
「誤魔化されませんよ?‘失敬’は人に対して敬意を欠いた振る舞いをすることや、先にその場から去ること、他人のものを黙って自分のものにすることに使います。ですから今の場合は?」
「失敗とか間違えたとかミス…」
「はい、結構です」

また真顔でパソコンに向かい合った西田さんから朱鷺に視線を移すと、彼は声を出さずに肩を揺らしていた。
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