手を伸ばした先にいるのは誰ですか
あの時、あれは男の目だと思ったが、妹だから蜷川朱鷺が抑えているものとばかり思っていた。だが、妹でないならどうだ?
美鳥なら…家のことを一番に考えそうだな。ということは…
蜷川朱鷺から交際、恋人関係を迫られて美鳥が拒否する…恋愛について漢字で考えたのが同じだと喜んだが、そうではなく彼女はとても悩んでいた?
そこへ俺が誘ったから‘初デート’だと言いながら一日付き合ってくれた。あの日彼女は俺と蜷川朱鷺を比べていたのか?
蜷川朱鷺がマンションで会ったあとも美鳥に俺のことを一切聞かなかったというのは、美鳥が彼を選ぶ自信があったということか?俺より年下の彼がいつ見ても余裕があるように見えるのは、美鳥がそばにいるからか?
この仮定通りなら…俺に可能性はゼロだよな、美鳥。今なお愛らしく感じるところが憎らしい…それでも愛しくて、また会えたら…と思ってしまう。
「お待たせ、龍之介」
谷川の声に立ち上がり荷物を任せる。
「明後日3時、今日の懐石料理店の料理長と会う」
「営業を回すのではなく、龍之介が来るのか?」
「そうだ」
ここへ来れば今日のように美鳥と会えるかもしれない。