ただそれだけ
第一章 桜

花粉①

時計は2時を回っていた。

辺りは時計の音と車が走る音に包まれていた。

ぼんやりと時計を眺めていた。

ふと目が覚めた。

時計を見ると2時30分だった。

夢でも見てたのだろうか?

背中に何かを感じ振り向くと、女の子が寝ていた。

何が何だかわからなかった。

思い出そうとすると頭痛が襲った。

思い出せない。

昨日の夜は友達と居酒屋に飲みに行ったところまでは覚えている。

辺りを見渡すと知らない部屋だった。

重たい体を起こし、しばらく時間が経ったが何も思い出せなかった。

帰ろう、そう思いベッドの近くに落ちていた服を着た。

彼女はいったい誰なんだろう?

エレベーターに乗り1階まで降りると、自分が今どの辺りにいるのかがわかった。

僕はタクシーを拾い家まで帰った。

タクシーの中で何度もくしゃみをした。

花粉だ。

部屋に戻るとコップ一杯の水を飲み、ソファーに座って目を瞑った。

もう一杯水を飲んだ。

体は重く何もする気になれなかった。

気がつくと4時になっていた。

今日は大学の授業もないし、アルバイトも夕方からだった。

少し眠ってしまったようだ。

6時に目を覚ますと辺りは少しずつ明るくなっていた。

酔いも少し覚めたので、冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

テレビをつけると朝の情報番組が流れていた。

女性アナウンサーが昨日の出来事を話していた。

昔テレビで朝のアナウンサーは3時には出社すると聞いた。

ビールを飲み終えると眠ってしまった。

起きた時には昼過ぎだった。

友人からメールがきていた。

昨日の女の子とはどうだった?

僕は全く覚えてないと返信した。

本当に覚えていないからだ。

夕方のアルバイトまでシャワーを浴びたり髭を剃ったり軽いストレッチをした。

僕はバーでアルバイトをしてた。

バーに着くと店長がいた。

グラスの準備やおつまみの準備をした。

店長は買い物に行ってくると言い店を出た。

客は少しずつ入り、店長は常連さんと話していた。

僕はオムレツやパスタ、ピッツァを調理した。

「家でも自炊はするの?」

女性の客が声をかけてきた。

「たまにします」

感心したように彼女は頷いた。

アーモンドが無くなったから買いに行って欲しいと店長に頼まれ近くに買い出しに行った。

おつまみの補充を忘れていたようだ。
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