ただそれだけ

午後の講義②

翌日の講義は午後からだった。

僕は彼女と、申し遅れたが彼女の名前は葉月だ。

葉月と一緒に昼食を食べた。

校内の食堂で食べる方が他の飲食店で食べるより安い。

葉月はどうして僕と会うのだろう?

なんだか不思議だった。

特に僕は面白い話をするわけでもないし、男性としての魅力があるとも思えない。

彼女は僕から何かを探ろうとしているのだろうか。

ただあの日の夜のことは何も覚えていない。

昼食を食べ終えると、今日の夜は空いている?と聞かれた。

アルバイトがなかったので、空いていると伝えた。

次の日は土曜日だったので僕も暇と言えば暇だった。

彼女と別れ、僕は午後の講義を受けた。

彼女から連絡があったのは21時ごろだった。

彼女は昼食の後そのままアルバイトに行ったようだ。

僕たちはスーパーの近くで待ち合わせをした。

近くの中華屋に入った。

ビールを2杯注文し、麻婆豆腐と青椒肉絲を注文した。

彼女は後ろで結んでいた髪をほどき、胸まである髪を指で伸ばした。

僕らはお互いのことをあまり知らなかった。

どこで生まれてどこで生活をしてどんな趣味があるかなど。

彼女の話は興味深いものがあったし、彼女も僕の話を聞いてくれた。

少しずつではあったが彼女は僕のことを信じてくれているようだ。

僕は彼女に対して好意を抱くようになった。

だが、あくまでも彼女はあの日の夜のことを少しでも突き止めたいのだろう。

居酒屋を出た後公園を少し散歩した。

桜は満開を過ぎ散り始めていた。

ベンチに座ると彼女は少し眠たそうに時折揺れていた。

帰ろう、家まで送るよと言ったが彼女は何も言わなかった。

ライトアップされた桜はやはり綺麗だった。

花見だろう、10人くらいの男女が木の下でお酒を飲んでいた。

時刻は23時をまわっていた。

もう一度帰ろうと言ったが、彼女は首を振った。

僕は近くのコンビニで缶ビールを買い、夜桜と星空を眺めていた。

彼女に水を渡すと半分まで一気に飲んだ。

きっとお酒はそんなに強くないのだろう。

彼女が眠ってしまいそうだったので、近くでタクシーを拾い彼女をやや強引にマンションまで送った。

マンションに着き部屋まで連れて行くとバッグから鍵を取り出しベッドまで連れて行った。

あの時の光景だった。
< 5 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop