エリート課長の脳内は想像の斜め上をいっていた
 意地悪な問いかけに答えられず、顔を真っ赤に染めた麻衣子は横を向く。

「もしかして、興奮したのか?」
「ち、違うっ」

 慌てて首を横に振って否定する麻衣子が可愛くて、下半身に力を入れていなければガチガチに興奮した状態の隼人の隼人がパンツの中で爆発するところだった。

 抱きたいと素直に告げれば、頷いた麻衣子は全身を真っ赤に染める。
 首に腕を絡めてくる麻衣子を縦抱きにして寝室へ連れて行き、壊れ物を扱いようにそっとベッドへ下ろした。

「今日は気分が昂っているせいか優しく出来ないかも」

 ベッドへ腰掛け「ごめん」と謝る隼人は、この先麻衣子を気遣う余裕は無いだろうと、自分でも分かっていた。
 今日は朝から若手社員の大きなミスをカバーするため、斎藤課長は相手先へ謝罪に向かったり本社へ経過の報告をしたりと、一日中奔走していたのだ。

 体は疲労感を訴えているが、頭は興奮で研ぎ澄まされていた。
 上司の立場で誠心誠意謝罪はしても、隼人本人の考えでは問題を拗らせて麻衣子との時間を減らすわけにはいかない。
 謝罪の時間を早く終わらせようと、取引先へ行き謝罪の言葉に少々の嫌味を織り交ぜてやれば、気の短い社長は計算通り頭を下げる隼人にお茶入りの湯飲みを投げつけた。

 頭に血が上った社長と隼人以外の者は、一斉に顔色を青くし部屋の空気が凍り付く。
 暴力行為を逆手にとって此方の失態を「無かったこと」にし、若手社員を適切な指導をして多少留飲は下げた。
 だが、全ての怒りと疲労は払拭出来なかった。

「今日一日、大変だったのは知っているもの。だから、隼人さんの好きにしていいよ」
「麻衣子、さん?」
「お疲れ様です」

 腕を伸ばした麻衣子は、湯呑みが当たって少し内出血している隼人の頬を撫でる。
 それだけで残っていた怒りの感情が消えていく気がした。

「は、そんなこと言われたら、我慢出来ない。爆発しそうなんだ。もう、いいか?」
「うん」

 麻衣子が頷くと同時に、彼女の上にのしかかっていった。



 昼間の疲労と、感情をぶつけた激しい行為の後処理してベッドへ戻った隼人は、目蓋の重みに負けて眠りかけている麻衣子の耳元へ唇を近付ける。

「麻衣子さん、俺の事を好き?」
「うーん?」
「はぁ、寝ぼけている時くらい、好きって言ってくれればいいのに」

 むにゃむにゃ口を動かす麻衣子の寝顔を見詰めて苦笑いする。
 体の相性も良く、ムダ毛の手入れも困った顔をしても拒絶はしない。何よりも、身悶えるほど可愛い。
 女性をここまで好きになったのは初めての経験で、落とそうとしたのに自分が先に落とされるとは、思ってもみなかった。
 自分が落とされたのが嫌では無く、むしろ嬉しい。

(逃げられないように子どもを先に作ってしまおうか。麻衣子さんと子どもの一人や二人、三人くらい養える分の蓄えは十分ある。いや、子どもが出来てしまったら結婚理由は、妊娠した事実が一位となり俺が好きという恋慕が二位になってしまう。子どもは欲しいが彼女の中での順位は俺が一番でいたい。それに妊娠中は激しい行為は禁止される。試したいプレイが出来なくなる)

「好きだよ。お試しじゃなくて、早く俺の彼女になって」

 完全に寝入っている麻衣子が微かに頷く。
 問い掛けに対する条件反射だったとしても、隼人は心が満たされるのを感じた。
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