こんなのアイ?



 真新しいクリニック内に克実と足を踏み入れすぐに立ち止まり、その場でぐるっとクリニック内を見回すと熱いものがこみ上げそうになる。

「克実…ここから始まるんだね。まだ始まるところだけど…克実、おめでとう。頑張ろうね」
「ありがとう、愛実。わくわくするよな…でもここには具合の悪い子たちが来るんだ…この雰囲気は今だけで開院したらガラッと雰囲気は変わってしまう。泣く子はもちろん、不機嫌な兄弟がケンカを始めることもある。それを怒鳴る親もいれば、熱のある子を抱えておろおろする親もいる。ここはそういう人の集まる場所になるんだ。愛実には想像以上のときもあると思う。でも事務に徹してもらえるようにベテラン看護師4人採用したから安心して。時には患者の親を怒れるくらいの人たちばかりだぞ、ははっ」

 看護師さんは、チーフとして平井さん55歳。彼女は克実が総合病院で何年か前に一緒に働いていた方で、自分の親の介護を自分でしたいと退職されていたそうだが、現在その親を看取られたあとで復職を考えておられたところへ克実が連絡したという。チーフとして看護師さんの勤務日等の調整を任せるという。

 同じく克実が一緒に働いていた方で2年前、自身の出産時に総合病院勤務は無理と退職されていた33歳の古川さんに克実から連絡をし、夕方の勤務はなしという条件でお願いする。そして平井さん古川さんがお一人づつ信頼のできる方を紹介して下さって克実が会ったのが、西村さん守田さん。どちらも44歳で中学生のお母さん。

 皆さん笑顔の素敵なおおらかな雰囲気の女性だ。顔合わせと言いながらも開院前の打ち合わせが始まろうとしたとき

「hello、間に合った?」

 ブレント…どうしてここに?
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