こんなのアイ?




 愛実がケガしなくて良かった…僕もそう思うよ、お兄さん。

 仕事の事を聞かれ、アイディアを蓄積する期間にするから問題ないと答える。デザインが形になったものをチェックする予定がこの1週間は詰まっているが、自分の細かい作業は後回しに出来る。

「そうは言っても本当は何らか影響はあるでしょうね…パソコンも不自由でしょうし…申し訳ない」
「そうだよね…本当にごめんなさい、ブレント。生活も不便よね…前に母がそういう風に固定した事があって、私実家で良かれと思って料理を作り置きしたの。スプーンで食べられるシチューとか…でも‘お皿も洗えないのよー’って母に言われて…」
「そんなことがあったな…ブレント、お住まいは?」
「S駅の近くです」
「えっ?同じなんだけど…どちら側?」
「ロータリーのない方、西口から10分くらいかな。愛実もS駅なの?」
「うん、東口」

 運命を感じるよね愛実…お兄さんの前だから言わなかったけど。

「ブレント、朝と昼は何とか出来る?私残業ないから夕食は作るよ。あっ、克実のところも週1は行くからね」
「愛実、また頑張り過ぎるから落ち着いて」

 お兄さんに言われ僅かに口を尖らす愛実も可愛い。僕にもそういう素の表情をどんどん見せて欲しい。それに頑張り過ぎる癖があるなら…やっぱり僕がどろどろに甘やかしたい。そう思う僕の耳に優しい兄の声がする。

「うちに来なくても、たまに愛実のところで食べるよ。その方が愛実に負担がかからないだろ?夜に移動しなくて済む」

 ここは優しい兄妹に便乗させてもらおう。

「僕も愛実のところにお邪魔していい?無理のない範囲でお願い出来る?」
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