極甘結婚はおあずけですか?
触れた瞬間、ビクッと肩があがった。
「っ!?誰だ!って結乃か……お前、なんで来てんだよ」
千紘はこんなところを見せたくなかったと舌打ちしている。
プロに入ってからの千紘は、私の前では弱っているところをなかなか見せてくれない。
高校生まではそんなところ、沢山見てきたから気にしていないのに。
私はもっと頼って欲しいのに……。
「早く帰れよ」
「……」
言葉は強いけど、多分千紘はもう夜遅いんだから早く帰れという意味で言っている。
いつもなら、一緒に帰るかと送ってくれるのに……。
やっぱり、この間のことを気にしているのだ。
だから私は、抱きついたその手を離すことなくさらに力を込めた。
「まだ帰らない!」
「はぁ?」
ちゃんと伝えてからじゃないと、私は帰るつもりはない。
「この前は、その――言いすぎた。ごめん」
千紘の気持ちは分かっていたはずなのに、急かすようなことを言ってしまった。