腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

―――好きな人とこうしていられるのが、幸せってことだって。

 その言葉がすごくうれしくて、胸がぎゅっと掴まれる。
 どんな顔でリクさんに向き合っていいのかわからなくて、思わず顔をリクさんの胸にうずめた。

「……もも、さすがに、今それは……」
「わ、私は、今日、お弁当持ってきただけだったんです……!」

 そう。なんとなく、足が向いていた。ここに。リクさんのもとに。今思えば、お弁当はただの言い訳だった。私は続ける。

「だけ、だったけど……」

「けど?」

―――ここにきて、今、そのリクさんの気持ちを聞けて良かった。

 なぜか、そう素直に言えなくて、

「……もう少しだけこうしててもいいですか」

 それだけ呟いて、リクさんの胸に顔を押し付け、腕をそっとリクさんの大きな背中に回した。
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