腹黒脳外科医は、今日も偽りの笑みを浮かべる

 打ち合わせが終わったのか、リク先生がこちらに気づく。
 先生はにこりと微笑んで私の前まで歩いてきた。

「もも、どうかした?」
「あ、あの、先生。今週末……」

 そう言って、勇気を出すように自分の手をぎゅっと握りしめる。


 私はあれから決めたことがあった。

 それは、自分から先生を誘ってみることだ。
 これまで、なんだか自分の都合を押し付けるみたいでなかなか先生を誘えなかったけど、あんな夢まで見るなんてどう考えても欲求不満の末期症状だと思ったのだ。

『今週末、二人きりで過ごしたい』

 そう言えば、先生だって分かってくれると思う。
 先生の仕事も大事だし、今まで勇気が出なかったけど、……でも、一度くらいそんなわがままを言おうと思っていた。

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