黒曜の戦場


「でも俺といおりは理不尽になんて怒らない。八つ当たりとかしないでしょ?」

「し、してない!」

「だから普段はちゃんと安心してるから大丈夫。ここは居場所のない奴らのホームなんだから、居心地のいい所でいたいからね」



そう説明されると、なんだかストンと心が落ち着いた。

そっか、咲くんたちがそういう場所にしてくれてるから、琥珀も居心地がいいんだ。



「学校の人達はいおりが怖いんだろうね」

「咲くんのことは怖くないの……?」

「学校では暴れてないからなぁ」



ということは黒曜では暴れたってことですか?



「あとは?気になってることない?」



もう聞きたいことが無くなった琥珀は「なくなりました」と言って下を向く。

なんだか少し、二人の空間が気まずくなって来てしまった。



「琥珀」



優しく名前を呼ばれると、この名前が特別のようなものに感じてくる。

聞き慣れた名前なのに、その言葉一つ一つを撫でられるように呼ばれて、顔を上げると、すぐ近くに咲くんの顔があって。



あ──くる。








わかっていたのに、琥珀はなぜだか、避けなかった。




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