黒曜の戦場


0.数ミリ単位で気を配らないといけない作業なんて、そこまで集中出来る人も限られてくるだろうし。

そのレベルを保ちながら数時間……いや、それどころか三徹してた奴が約一名いたわ。



え、なにそれ正気の沙汰じゃなくない???

普通に体壊すよ???



「それで、削る時なんだけど」

「……う、うん」

「網目通りに削っちゃうと、ドットの集まりが丸ごとごっそり消えちゃうから」



つまり……?



「網目からちょっとズラした角度で……10〜30℃くらいの角度で削るの」



シャッシャッシャッシャッ、カッターの先端を手前にスライドさせて、面の側で削っている、未夜くん。

魔法の手によって現れるグラデーション。

等間隔でリズム良く削られていくドットの欠片たち。

けれど決して、フィルム自体を切っている訳ではなく、上の印刷部分だけ削り取っている。



「削りました」

「地道な作業だね……」



さっきまでトーン作業にルンルンしていた自分の顔面をアイアンクローでねじ伏せてやりたい衝動感。

作業がミリ単位以下の気配りを平気でしてるんだよこの子……!?

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