ユーサネイジア ー安楽死ー


ワタシはカメラの映像に映ったその男に向かって告げる。



「あなたの育成は終了しています。ワタシの現在のペアリング先は伝えられていないはずなのに、どうやって情報を得たのですか」



――わからないはずがない。

この男は、ひとつ前のペアリング相手だ。



「相変わらず硬ってぇな。おいガキいるんだろ、俺はお前の兄貴だ。入れろ」

「…………お兄ちゃん?」

「あなたとこの子に血は繋がっていません」

「それ言うとテメーなんて血も流れてねぇだろ。マーマ」

「……」



現在19歳であろう、順当にいけば大学生のはず。

ギフトも全て施設の者に処分させていたはずだ。

確かにワタシが育てていた頃、この子はヤンチャで、ふらふらとすぐワタシの視野を外れて迷子になるし、よく懐いていて手のかかる子供だった。



それでも、こうしてアンドロイドに会いに来るだなんて、一体この男は何を考えているのか。



『いーれーて』

「不審者の入室は許可できません」

『ひっでぇ。じゃー出て来て。デート行こ陽葵?』



デート……?

アンドロイドがデートなんて、前例がない。

デートとは人間同士が恋仲を深める為に使う言葉じゃないか。



「却下します」

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