甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》
水のおかわりのためキッチンへ行くと
「壱、頑張れよ。あれは好きとは言ってない」
「チッ…」
「俺が言っても‘うん’と答えるぞ」
「答えない」
「まあ、見てて」
完全に遊んでいる誠がグラスを持ち紫乃の隣に座る。
「はい、おかわり」
「ありがとう」
今度は半分飲んでグラスを置いた紫乃に
「まこちゃんって言ってみて」
「まこちゃん?」
「そう、ずっとそう呼んで」
「うん」
「紫乃ちゃん、壱のこと好き?」
「…まこちゃんには言わない」
「えーどうして?」
「言いたくない」
よし、やっぱりさっきは意識があって言ってるってことだな。
「じゃあ、俺のこと好き?」
「うん」
はっ?
「俺のどこが好き?」
「ご飯美味しかった」
「紫乃ちゃんのご飯も美味しかったね。壱は?壱のどこが好き?」
「…わからない…いつも私を見てくれていて…優しいところかな?」
「壱は優しい?いつも偉そうだぞ、あいつ」