甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》






惚れ直した…本当に…俺にはもったいない女だよ、紫乃は。

榊原さんと聖さんからは、彼らから受ける話はもちろん、それ以外にも彼ら自身の仕事についても聞いた。俺も誠も、加えて言うと真麻も法科の成績ではトップクラスで司法試験を受けないことを不思議がられた、勉強が出来る頭のいい奴ではある。だが、榊原さん聖さんは、更に上をいく、勉強が出来るだけでなく世界情勢や経済の先を読み取ることに特化した男たちだと思う。俺たち法科の先輩だが卒業後アメリカの大学で経済と経営を学んでから日本でコンサルティング会社をしている。そういう二人から聞く話は刺激的だ。

話を聞く間からインスピレーションがわいてくる。そのまま作業に没頭して紫乃が上へ戻ったことに気づいていなかった…必ず声を掛けてくれたはずなのに。

‘幸せ’なんて言葉は視覚的に入ってくることがあっても、自分の口から出る言葉だとは思ってもみなかった。宣伝文句や何かのセリフの定番であって、日常会話で使うような言葉だという認識は全くなかったんだ。

それが‘幸せかもしれない’紫乃と出会っていなければ歯の浮くような空虚なセリフだが、今、心から言える。これがもう幸せなんだよな…

抱きしめたい、キスしたい、舐めたい、紫乃の中に入りたい…好きなら当然の気持ち欲望で、満たされ幸せを感じる瞬間を得る行為だ。だが、俺たちの永遠を手に入れるにはそれ以外の幸せを大切にしなければならない。今日より明日、二人が幸せになるように。
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