甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》






こんなに包み隠すことのない会話ができるものなんだ…私の目の前で美味しそうに味噌汁を飲む翔悟さんを見つめる。

「熱い視線を感じますね」

彼はふっと表情を柔らかくして視線を上げた。

「うーん、こんなに包み隠すことのない会話をすることができるのかと感心してたの。プライベートでは今日初めて会ったけれど何年も前から店では会っていて…だからこんな会話できるのかな?きっと翔悟さんは素の私を知ってると思うの」
「そうなりますね」
「私でいいの?」
「愛とか、好きとかが今わかるわけではありません」

それはお兄ちゃんにも言われて理解しているので頷く。

「今までは代表の妹さんという風に真麻さんのことを見ていたので」
「そうですよね」
「でも私の強い結婚願望を知って代表が真麻さんを紹介して下さると聞いたとき‘仲良くやっていける’まずそう思ったんです。だからこうして一緒に過ごしているうちに私は必ず真麻さんを好きになる。今日のこの数時間だけでもとても魅力的ですよ、真麻さんは」
「私は翔悟さんのこと好きです。私がお兄ちゃんに翔悟さんのこと好きだと言ったから紹介してくれたんです」
「そうでしたか…代表はそうは言わずに私にいい相手を紹介すると」

お兄ちゃんは気を使ったのだろう。好きというものをふるという形にしないように、あくまでも自分がアレンジして顔を合わせた二人でどちらが断ってもいいように、と。

「代表の分かりづらい気の使いようですね」
「いつもそんな感じです」
「男が憧れる、優しくてできる男ではありますよね」
「自慢のお兄ちゃんですから」
「今夜は送って行きます。今日の今日では‘お兄ちゃん’に申し訳ない気がするので。ちゃんと結婚を前提に付き合うと報告してから‘致しましょう’」
「あははっ…翔悟さんおかしい…ふふっ…はい、ではそちらの相性も後日ご確認よろしくお願いいたします」

こうして私は翔悟さんの彼女となった。お兄ちゃん、ありがとう。
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