甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》






ベビーベッドの置かれた寝室で俺が紫乃を抱きしめて寝るのは以前と変わらない。途中で起きてもいつもの定位置に戻って眠る紫乃の耳たぶを甘く噛み

「お疲れ、紫乃…おやすみ」

そっと囁き俺も目を閉じる。明け方は2時間半で泣き出した雪乃に起こされ、まだ暗い5時すぎに朝食を準備する。朝食を俺が作るのも以前と変わらない。ただこの時間に朝食を食べると、俺も紫乃も揃って昼までに腹が減る。

11時ごろ、二人でグラノーラを食べていると父さんが来た。

「午後かと思ってた。おはようございます」
「おはよう、紫乃ちゃん。眠いだろうが大丈夫?」
「はい。お義母さんのおかげでキッチンの用事はしないままお昼寝ばかりです」
「今はそれが仕事。今日はね、母さん、自分の予定が午後にあるから朝から作ってたんだよ。はい」
「ありがとう、何だろう?」

母さんと違いエコバッグごと紫乃に渡すところが父さんだ。

「わぁ、いなり寿司…たくさん。これは…開けないとわからないな…肉じゃがだ」
「あとは、こっちは今買ってきた」
「お義父さんが?」
「ああ」
「あっ、リンゴとイチゴ…嬉しい。ありがとうございます」
「いえいえ。で、ゆきちゃんに会おうかな」
「もうすぐ起きると思います」
「おっ、1週間でしっかりしたねぇ、ゆきちゃん」
「違います?」
「違うね。しっかり育ってるよ、紫乃ちゃんが育ててるんだね。いい調子」

いい調子って、どんな褒め方だよ…紫乃が嬉しそうだから突っ込むのはやめておくが。
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