甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》





スマホは会社支給で買ってくれると言い、身の回りのものは困っている従業員を助けるだけだと言って長谷川さんのカードを出されてしまう。もう今日はこれ以上あれこれ言うのも疲れた…後日改めてお返ししよう。

でも…

「ちょっと…長谷川さんっ?」
「ん?」
「選んでないものが混じってます」
「似合うと思う」

こんなに大量の荷物でビジネスホテルに滞在するの?はいっ?

「長谷川さんもお買い物ですか…?」
「選んでくれる?」

どっち?と聞かれてこっち…を繰り返し、彼の車でビジネスホテルへ送ってもらうと

「えっ…長谷川さんも?」
「そう。隣にいるから」
「…ご自宅が徒歩10分ですが?」
「今の紫乃が一人でいるのは危険」
「危険?」
「あいつらが職場を知っているんだろ?」
「…はい…名前は伝えたので」
「紫乃を一人で歩かせられない。一緒に出退勤な。ところで、あの男の会社ってどこ?」
「会社?」
「なんか昼間に暇そうだからどんな会社か気になっただけだけど…」
「××電気設備ってところだと思います」
「ふーん。じゃあ、あとで飯な」

長谷川さんは私の荷物を部屋に入れてくれると、自分は隣の部屋へと消えた。
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