甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》





時間を確認すると5時10分。まだ繋がるか?番号非通知で男の会社へ電話をかける。

「匿名リークで失礼します。水戸征二さんの勤務状況を調べられた方がいいですよ」

それだけ伝え通話を終える。いたずらと無視されたら次の手を考えないといけない。しかし、親会社同様の体制が整った小さな規模の会社だから、チェックが入る可能性が高いと踏んだ。連休明けの、どの会社も忙しいであろう午前中に女二人に順に連絡を取るような奴は絶対に勤務状況に問題があるはず。

さて、紫乃に食事をさせないとな。新しく登録した番号に電話をかけると

‘…はぃ’
「悪い。寝てたか?」
‘…ぃえ…ぁはぃ…少しうとうと…’
「眠れるならこのまま眠って…食事は何か買って来ておくから目覚めたら何時でも電話しろよ」

あまり話をして目がさえては良くない。せっかく眠れるなら眠った方がいいだろう。こちらから通話を終えると、寝ぼけた紫乃の声を脳内に、すぐそこの駅前で何か買えるだろうと部屋を出た。

小さな弁当や簡単な巻物寿司、惣菜類を買い、最後に飲み物を多めに買う。重い荷物と共にホテルの部屋に戻ると、誠からメッセージが来ていた。

‘借主都合の途中解約はここの賃貸契約の内容により2か月前には解約の意思を伝える必要がある。よって、ここは6月末までと7月の数日分が日割りで家賃が発生するがもちろん壱が払うだろ?明日解約通知書の提出と同時に解約までの家賃を俺が支払っておいて紫乃ちゃんの引き落としは無しにするから’

さすが、俺のことをよくわかっている。

‘それで頼む’
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