甘い支配の始まり《マンガ原作賞優秀作品》
襟周りにたっぷり入ったギャザーとボリューム感のある袖、大きめのカフスがポイントの柔らかなピンクブラウス。それから感じられるゆったりとしたムードをタイトなブラックスカートでまとめ…ああ…紫乃にぴったりだ。
十分に歩ける距離だが、買い物に使っていた車を戻さなくてはならない。オフィスビルの地下に車を止めて、1階のカフェでシンプルなトーストのモーニングを食べると
「朝から贅沢ですよね」
と紫乃がたっぷりのカフェオレを飲む。
「朝はいつも食べない?それとまだ勤務前だ」
「…必ず食べるけど、トーストと珈琲だけが多いかな」
「そうか」
今日から毎朝この時間が迎えられるなんて、あの腐った二人に感謝すべきか?昨日は夜に‘連絡して’と男からメッセージが入っていただけで電話はなかった。
そして2日後、事が動いた。
俺と紫乃はホテルから徒歩通勤の穏やかに見える日を過ごしていたが、紫乃はウィークリーマンションを調べているようだった。そこへ
「紫乃っ」
退社しようとビルを出た俺たちの前に、男が駆け寄る。
「お前俺の会社に何言ったんだ?」
うおぉ…やっぱり会社が動いたか…男と紫乃が一度は対峙しなければならないことは、紫乃も覚悟している。会社のことを言われて、今は可愛いらしくキョトンとしているが…