義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~

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私が母と天ケ瀬家にお世話になるようになったのはふたつか三つの頃だった。父を事故で亡くした母が、住み込みの家政婦として天ケ瀬家に入ったのがきっかけだ。

フードサービス事業をメインに拡大を続ける大企業体・天ケ瀬グループ。そのトップである天ケ瀬泰作社長は、早くに妻を亡くし、ひとり息子と広い邸宅で幾人かの使用人と暮らしていた。母はその使用人のひとりとなったのである。

『丞一坊ちゃん、ぼたん、いらっしゃい』

母は当時五歳の丞一を、私と一緒に実子のように世話した。日々の暮らしはもちろん、忙しい社長の代わりに親代わりの仕事はなんでもこなした。
彼は母によくなついていたように思う。なんでも、実母は産後ほどなく亡くなったそうだ。母親代わりの老家政婦も退職し、さみしさが募っていたところにやってきたのが母と私。もとより愛嬌のある丞一は、母親と妹ができたと思ったようだ。無邪気な愛情たっぷりに母に甘え、私には兄らしく振る舞って面倒を見てくれた。

私の古い記憶には、丞一に手を引かれ庭を歩いている思い出がある。歩みが早くて転んでしまい、泣いた私を母のもとに連れて行こうと一生懸命引きずっている光景だ。丞一自身も困り果てて泣きそうな顔をしていたっけ。

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