義兄の甘美な愛のままに~エリート御曹司の激情に抗えない~
「蘭奈、気づいているだろうが、俺がずっと好きだったのはぼたんだ。親父も知っている。いずれ、妻に迎えたいと思っている」
「やめて、丞一くん。義理でも妹じゃない」
「ずっと妹とは見ていない。ひとりの女としてぼたんを愛している。おまえやおまえの家族に引き裂ける関係じゃない。これ以上くだらないことはやめろ。原賀家全員の問題になるぞ」

厳然と宣告すると、義兄はぐっと床を踏みしめ、体勢を保つ。私は寄り添って支え、蘭奈さんを残してその場を後にした。

「たぶん、最初のワインだ。蘭奈が試したいと開けたもの。睡眠薬か鎮静剤みたいなものが入っていたんだろう」
帰り道のタクシーで義兄はそう言った。背もたれにぐったりと身体を預けている。
「普段あまり薬などは飲まないからな。酒と一緒に取ったら歩くのも難儀になってしまった」
「よかった……何もなくて」
「助かった、ぼたん。俺ひとりでは、蘭奈から逃げるのにどうしても乱暴なことをしなければならないところだった」

それは別な意味でよかったと思わざるを得ない。
足が利かない分、突き飛ばしてでも逃げる気だったのかもしれないが、それはそれで大事になっていただろうから。

マンション前で降り、義兄の身体を支えて部屋に戻る。雄太郎さんの姿がエントランスや玄関になくてホッとした。
義兄をベッドまで連れていき、ジャケットを脱がせた。さすがにくたびれたようで、義兄はシーツにどさりと身体を横たえる。
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