雨上がりの景色を夢見て

side 高梨兄妹

中川先生が出た後のリビングで、天然水で酔いを覚ましながら、ソファーにすわる。

貴史くんのいたずらに便乗したのが正解だったのかどうかは、まだ分からない。

この先も、気にかけて見守っていこうと思っている。

ただ一つ言えるのは、中川先生の心は常に限界だったのだという事。今日、さまざまな偶然が重なって、彼女の限界を超えてしまったのだと思う。

熱だってそう。風邪というよりは、疲労の方が大きかったのだ。

華奢な身体で、あんなに大きなものを抱え込み、ここまでよく立っていられたものだと驚く。

泣きじゃくった彼女は、少し幼さが見られた。高校3年生のあの時の彼女そのものだったのかもしれない。

生きることに罪悪感を感じてきた苦しみ。幸せを感じた後の後悔。

もっともっと、早く訊いてあげられればよかった。踏み込む勇気がなかった俺の弱さだ。

今日を境に、少しでも、中川先生の生きることへの後ろめたさがなくなればいいと願っている。

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