雨上がりの景色を夢見て
「雛ちゃん、おかえり」

リビングに入ると、少しほろ酔いの仁さんが上機嫌に声をかけてきた。

「仁さん、お久しぶりです」

「雛、おかえり。ケーキありがとうね。ご飯の後食べましょう」

キッチンからエプロンで手を拭きながら出てきたお母さんは、そう言って私からケーキを受け取り、料理のたくさん並んだテーブルへ促した。

エビフライや唐揚げ、ピザなど、菜子の大好きな食べ物ばかりが並んでいる。

「わぁー、かわいいワンピース」

プレゼントの包みを開けた菜子の驚いた声が聞こえ、ソファーにいる菜子を見た。

夏らしい大きなひまわり柄のシャツワンピースを体にあてて、嬉しそうにその場でくるっと回った菜子。

「菜子のお気に入りの麦わら帽子に合わせても可愛いと思うわ」

菜子は、私の言葉を聞いて、廊下からお気に入りの麦わら帽子を持ってきて、頭にかぶり、先ほどと同じようにワンピースを体にあてた。

やっぱり、とてもよく似合っている。

「あらー、素敵ね」

お母さんも嬉しそうに菜子の可愛らしい姿を見て、胸元で小さく拍手をしている。

ほろ酔いの仁さんも、目尻の涙を拭きながら菜子の姿を見ていた。

仁さんが、菜子の誕生日や行事で泣くのは毎回のこと。最初は驚いていた私と母だけれど、もう慣れて、何も触れなくなった。

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