雨上がりの景色を夢見て
気持ちを伝えよう、そう決めたのは、帰り道に思わず腕の中に抱きしめた時の、雛ちゃんの行動を見て。

俺の腕を振り払わなかったし、嫌がるそぶりもなかったから。

ずっと、考えてきた事を、向き合って話そうと決めた。

でも、きっと振られるんだろうなという気持ちの方が大きかった。

貴史くんの存在には叶うわけない。雛ちゃんは、貴史くんのことを想ったまま、俺と付き合う事に躊躇うと分かっていたから。

でも、俺の気持ちを伝えているうちに、雛ちゃんを心の底から欲しいと想った。それは、貴史くんを想ったままの雛ちゃんを。

全てを受け入れて、受け止めてでも、幸せにしたかったんだ。

俺の前で、涙を見せてくれる事に、戸惑いはない。ありのままの雛ちゃんだから。

悩んだって、頭の中で色々なことを考えたっていい。雛ちゃんの表情から、感じ取って、吐き出すきっかけを作るから。

この腕の中に、彼女の安心できる場所を作ってあげたい。

そう思ったんだ。

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