雨上がりの景色を夢見て
少し先の、ジェラード屋に入っていく姿が見えて、俺は小さく息を吐いた。

さっき、ケーキを食べたばかりなのに、と思いながら夏奈に何か言ってほしくて隣を見る。

夏奈は苦笑いで俺を励ますかのように、俺の背中をポンッと叩いた。

「雛ちゃん、特に深い意味はないと思うわよ?」

「…俺だってそう思ってるさ…」

だけど、相手が修二くんだと言うところに引っ掛かっている。

部活の後輩ということで、気が知れた中だから偶然会って、ちょっとお茶でもの感覚でジェラード食べに寄ったと考えられなくもない。

「…高校の頃から仲良かったんだろ…」

雛ちゃんの性格上、本当にそんなに仲が良かったのだろうか、と思いながらも、自分を納得させるためにも呟いた。

「…だと良いけど」

「何か知ってるのか?」

夏奈の言葉が引っかかって、聞き返す。

「…雛ちゃんは、仲が良いとは言ってなかったわね。でも、貴史くんのことは尊敬してたみたい」

夏奈の言葉に、俺の中の心配が大きくなっていく。

独占欲の塊じゃないか…。こんなに自分は嫉妬深かっただろうか。

「そんなに気になるなら、明日直接聞けば?」

俺の様子に、はっきりと言い切る夏奈。

「…いや、それはしない」

まるで束縛してしまうようで、さすがに気が引ける。

「…夏樹、面倒臭い感じになってきてるわよ」

「…だよな」

もう一度、ジェラード屋に視線を向ける。

あっ、ベンチに座ってる。2人の間に、人1人座れるほどの隙間があることに安心して、ほっと息を吐く。

…大丈夫そうだな。

そう思えたところで、俺は部屋の中に入った。


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