雨上がりの景色を夢見て
「…意外…」

「自分でも、そう感じてる」

淡々と話す高梨先生の言葉に、耳を傾ける。

「夏奈も、そんな俺を見るのが楽しくて仕方ないらしい…」

夏奈さんも、今まで高梨先生の余裕のない姿を見たことなかったんだ…。

私にとっては、いつも通りの高梨先生に見えても、きっと先生を知り尽くしている夏奈さんにはその変化が大きく感じるのだと思う。

「そういえば、今日、夏奈さんは…?」

「出勤日。月2回は日曜日の出勤があるんだって。体調もいいから、夏奈は喜んで仕事行ったよ」

高梨先生の言葉に、少し気になったことがあり、高梨先生の横顔を見る。

「私、夏奈さんの元気なところしか知らないけれど、今も体調すぐれない時があるの?」

「んー…ホルモンバランスが崩れやすいから、たまにね。でも、最近は自分で対処できるようになってきたみたい」

普段から明るい夏奈さんからは、そんなことは全く感じられなかった。

もしかしたら、私と一緒にいる時も、本当は無理をしていることがあったのでは、と心配になった。

「ちなみに、夏奈、体調良くない時は、相手が誰でも約束は断って家で休むから、気にしなくて大丈夫」

私の心境を察した高梨先生は、私の心配をかき消すような言葉をかけてくれた。

「大きい病気2回も経験してるからね。無理してもろくなことないって分かってるんだ」

高梨先生の言葉に、夏奈さんは、いつも太陽のように明るいけれど、きっと体調には細心の注意を払っているのだと思った。



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