雨上がりの景色を夢見て
「あっ…海…」

高速道路からチラッと見えた景色に、私のテンションが上がる。

「海好きなんだね」

「はい」

高梨先生の質問に答えて、言葉を続ける。

「意外だって感じると思うけど、私は小さい頃からプールに通ってて、中学も水泳部だったの」

私の言葉に、一瞬視線を私の方に向けて、すぐに前を見た高梨先生。何も言わないことを確認して、私は、そのまま話を続けた。

「水が好きなの。だから、海も好きで…。変わってるかもしれないけど、雨に濡れるのも好きなの…」

「あー、分かるな。俺も、好きだよ」

そう答えた高梨先生の言葉に、懐かしさを感じる。

〝俺も雨、好きだよ〟

そう言った貴史の言葉が蘇ってきた。胸がぎゅーっと締め付けられる。

「個人的には、雨の音とか、ずぶ濡れの後のお風呂上がりとか気持ちいいから好きなんだけど、部活動的にはあんまりって感じかな」

そう続けた高梨先生の言葉に頷く。

「私も、雨の音、好きです」

「じゃあ、一緒だね」

前を見て、優しく微笑む高梨先生に、貴史のことを思い出して、少し切ない気持ちになっていた私の心を包み込む。

「…雛ちゃんの水着姿か」

そう呟いた高梨先生を見る。少し口元が緩んでいて、

「…変な想像しないで下さい…」

少し怪訝な表情で高梨先生の横顔を見た。




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