雨上がりの景色を夢見て
私の想像を遥かに超えたお願いに、私の思考が停止する。

波の音がものすごく遠くに聞こえた。

「すぐに結婚っていうわけではなくて、雛ちゃんが良ければ、結婚を見据えて付き合っていきたいと思ってる…」

〝結婚〟という響きに、今、私の中で初めて向き合った言葉だと実感する。

だけど、私のこの先の出来事に、高梨先生がいるところが自然と想像できて、それが私の中の答えなのだとすぐに気づいた。

「…私も、そうしたいです」

恥ずかしすぎて、うまく笑えているのか分からないけれど、私の答えに、高梨先生の表情がとても明るくなった。

両腕で、私をぎゅっと抱きしめる。

「ありがとう…」

耳元で囁かれて、私の身体が一気に熱を帯びる。

「このまま、2つ目のお願い」

高梨先生は抱きしめたまま、耳元でふたたび言葉を続けた。

「貴史くんと、大和田さんに会いに行こう。2人で」

えっ…

以前、高梨先生に考えておいてと言われた事を思い出す。ずっと頭の片隅にあったこと。なかなか気持ちが固まらず決めきれないでいた時期。

「大和田さんの都合が良ければ、文化祭の後の代休あたりに…。どうかな」

高梨先生がお願いの順番をこうした理由がなんとなく理解できる。

きっと、私との将来をはっきりさせてから、報告に行きたかったから。

私は、高梨先生の腕の中で小さく頷いた。

「…よかった…」

高梨先生の声から、安堵した様子が伝わってきた。





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