雨上がりの景色を夢見て
第12章 ケジメと気づき
「…緊張する?」

運転席の高梨先生が、私の顔を覗き込んで確認する。

私は頷いて、口を開いた。

「…貴史の家に着いた時に、自分の中にどんな感情が湧き上がってくるのか、全然想像できないんです…」

久しぶりすぎて、あの頃の感覚が蘇った時、自分がどうなってしまうのかが不安だった。

「俺は、雛ちゃんがどういう姿を見せても、全部受け止める覚悟は出来てるよ」

高梨先生の言葉に、ちょっと気持ちが軽くなり、私は高梨先生に少しだけ微笑んだ。

高校生の頃、何度も一緒に下校した帰り道に、私の中に懐かしさと切なさが込み上げてくる。

まだぎこちない距離のあった付き合いたての頃の記憶や、内心恥ずかしかった手を繋いで歩いた景色。

「こっちであってるのかな…?」

少し狭くなった路地に差し掛かり、一度車を寄せた高梨先生は、ナビから私に視線を移して尋ねた。

「はい…。あの青い屋根の家を左に曲がって真っ直ぐ行くと、パン屋さんがあるんです。そのパン屋さんの斜め向かいです…」

私の頭の中に、景色が鮮明に思い出される。

「さすがだね。ありがとう」

高梨先生はにっこり微笑んで、私の頭に一瞬だけ触れると、前を見て運転し始めた。





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