雨上がりの景色を夢見て
高梨先生がインターホンを鳴らすと、すぐに玄関の扉が開いた。

出迎えてくれたのは、優しい表情の貴史のお母さん。

「いらっしゃい。雛ちゃん、夏樹くん」

あの頃と変わらない穏やかな表情のおばさんを見て、私の目がじんわりと熱くなる。

泣かないと決めていたのに、懐かしさと、あの出来事が頭をよぎる。

「雛ちゃん、お父さんが待ってたわ」

えっ…

「…おじさんが…？」

胸がドクンと跳ねる。

心の中に、貴史とシルエットもそっくりなおじさんの姿を思い出す。

この家に遊びに来た時に、何度か会った。その時の貴史との関わり方がとても優しくて、親子というよりは、まるで友達のようだった。

そんな2人の関係を引き裂いでしまった罪悪感が蘇る。

おばさんは、私のせいでは無い、と言ってくれたけど、おじさんも本当にどう思ってくれているのだろうか…。

不安が募る。

「お邪魔します」

頭の中で色々考えていると、冷静にそう言ってスリッパに履き替える高梨先生の声が耳に届いて、私もハッとして、後に続く。

「大和田さんの旦那さんに会うのは、初めてです」

「そういえば、そうね」

高梨先生の言葉に、ふふっと微笑むおばさんの表情が、かえって私の胸を締め付ける。






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