雨上がりの景色を夢見て
「今となっては、もっと早く離婚してれば良かったって思ってるわ。心のどこかで、雛にとって良いお父さんに戻ってくれると期待していたの。でも、それがかえって、雛の心に深い傷を負わせてしまっていたのね…」

俺は、膝の上の手をぎゅっと握って、握る拳を作った。

「…それでも、雛さんは、お母さんのことが大好きです。菜子ちゃんのことも、仁さんのことも」

俺の言葉に、雛のお母さんは少しほっとしたように微笑んで、「ありがとう」と一言呟いた。

「…雛のこと、支えていきます。理由が分かって、安心しました」

お母さんにも心当たりがなかったら、なすすべがなかったと思う。はっきりと理由がわかったことで、俺自身の心の準備ができる。

雛は、きっと1人で抱え込もうとするだろう。その時に手を差し伸べてあげたい、そう強く思う。

「…雛は、実のお父さんのこと口にしたことある…?」

「いえ…。離婚したとしか聞いてません」

雛のお母さんは、遠慮気味に俺を見て、ゆっくりと話し始めた。

「…これは、雛はまだ知らない話なんだけど…」

俺は無言のまま、彼女のお母さんの言葉に耳を傾ける。

言葉の一つ一つが俺の胸に突き刺さり、衝撃が走る。

時折、苦しそうな表情を見せるお母さんを見て、俺も胸が苦しくなる。



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