雨上がりの景色を夢見て
第15章 温もりを感じて
「じゃあ、2人でごゆっくり」

夕飯を食べ終わり、出かける準備ができた夏奈さんは手をひらひら振って、藤永先生のところへ向かった。

パタンッと閉まる玄関の音が聞こえると、高梨先生はリビングに戻っていき、ソファーに深く腰掛ける。

「雛も座って」

優しく微笑み、ソファの隣を軽くぽんぽん叩いて、私を手招きする。

さっき、夏奈さんと話した内容を思い出して、心の中では、心臓がドキドキしているのが自分でもわかる。

「この微妙な距離…警戒してる?」

ちょっとだけ間を空けて座ると、高梨先生が困ったように言った。

私は慌てて首を横に振る。

「恥ずかしいだけです」

「なんで…?」

確かに、隣には座り慣れているはずなのに、恥ずかしいと言う言葉は、高梨先生にとって不思議に思うはず。

だけど、答えてしまうと、夜に誘う言葉がなくなってしまう。

頭の中で、色々考えて出てきた答えは、

「後で教えます」

だった。

「分かった」

高梨先生は、優しいからそれ以上詮索はしない。だけど、きっと気になっているんだろうな、と思うと申し訳ない気持ちになる。

「そういえば、アイスがあった。近くのジェラート屋さんの持ち帰りを夏奈が買っておいてくれたんだって」

そう言って、高梨先生は立ち上がってキッチンへ向かう。

ジェラートと聞いて思い出したのは、以前修二くんと入ったあのお店。

そういえば、塩バニラおすすめだって言ってたけど、まだ1回も食べてなかった。


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