雨上がりの景色を夢見て

side 高梨兄妹

「高梨先生の妹さん、美人すぎません?」

3件目の席で、向かい側の都筑先生が、ビールを片手に言った。

「そうか?」

「もうー、だから高梨先生の理想が高かったのかー…」

「都築先生の気持ちは、よく分かる。うんうん」

都筑先生の様子に、移動が決まっている英語教諭の遠山先生が背中をポンポン叩いてなだめる。

「そういえば、私さっき気がついちゃった」

背中合わせに座っていた、同期の安藤先生が、俺の方を向いて、にやにや笑いながら話しかけてきた。

「何を?」

「ふふふっ…さっき、中川先生のこと、〝雛〟って言ってたよね?」

「はい、はい、はーい!僕も聞いてました!」

安藤先生の言葉に、都筑先生も便乗して手をあげてテンション高々に言った。

「…覚えてないな…」

本当は、覚えていたけれど、これ以上反応してしまうと、色々突っ込まれそうで、あえて平然を装って答える。

「…高梨先生、顔にやついてる」

遠山先生が、俺の顔を苦笑いで見て、こっそり教えてくれた。

マジか…。顔に出やすいんだな、俺。

「…ありがとうございます」

お礼を言いながら、遠山先生に空いたグラスにお酒を注ぐ。遠山先生は、ネクタイを緩めながら、俺のグラスと合わせた。





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