パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
『君の明日のスケジュールは?』
 こういうことを先に確認するのが貴堂らしい。

「僕は明日は待機で明後日はオフです。以前にお伺いした貴堂さんのご自宅の近くに今いると思うんですが」

 きょろきょろと辺りを見回して目印になりそうな建物を伝えると本当に貴堂の自宅はそこから目と鼻の先だったらしい。

 マンションまでの道を教えてもらい、雪真はゲスト用のパーキングに車を停めた。

 入り口にはコンシェルジュがいて、貴堂につないでもらい案内された部屋に向かう。
 大手エアラインの機長ともなればこんな部屋に住めるのだな、と雪真は納得する。

 部屋のインターフォンを鳴らすとどうぞと言われたので中に入った。

「花小路くん、奥だ。入って」
 そんな声が部屋の奥から聞こえて、雪真は部屋の中の方に入っていくと、貴堂がベランダのデッキチェアで隣に何やら美味しそうなオードブルをテーブルに置いて、すでにワインを飲んでいた。

「お疲れ様。悪いな先にやってる。冷蔵庫は勝手に漁って構わないぞ。オレンジジュースとかジンジャーエールとかあったと思う」
 そう言って、貴堂はキッチンの方を指差した。
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