パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
 その告白は、貴堂にもとても嬉しいものだった。貴堂は紬希のその髪や額にそっと何度もキスをする。

「貴堂さん……」
「ん?」
「私、貴堂さんのことがもっと知りたいです」

 貴堂は苦笑する。
「紬希、この状況でそんなこと言っちゃダメだ。男は誤解するよ?」

「誤解じゃ……ないです」
 囁くほどに小さな声。

 けれど、貴堂はそれを聞き逃すことはない。
 思わず紬希を見ると茶色い瞳が潤んでいて、熱をたたえているのに薄く羞恥心が垣間見え、それはとてつもなく艶めいている。

「後悔……しないね?」
 紬希はこくりと頷いた。
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