パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
「っだ、大丈夫ですっ」
──声がひっくり返りました!

 横で貴堂がくつくつ笑っている気配がする。
「可愛い過ぎるよ。そうか……いつもそうやって紬希は一生懸命に必死にやってきたんだな」

 胸の上で手を組んでいた紬希の手に、貴堂はそっと触れる。
 そうして顔を伏せていた。

 肩が小刻みに揺れていて、何となく察した紬希だ。

「あの……そんなに笑います?」
「ごめん。ドアを閉めて振り返ったら紬希が仰向けですごく覚悟してたから。本当に大丈夫なのかな?」
 そう言って貴堂は紬希の指に自分の指を絡める。

 貴堂の囁くような声がいつもと違って紬希の耳に届く。甘くて、低くて良く響くのは変わらないのだけれど、いつもより優しくて近い。

 囁くような声は近くにいないと聞こえない。この声が距離の近さなんだと感じて、紬希はどきどきした。

 紬希の指先に絡んでいる貴堂の指にも鼓動が高鳴る。
「こんなに小さくて細いのにな」
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