パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
 けれどふうっと表情を曇らせた紬希は、俯いてしまうのだ。

「けど、私には難しくないでしょうか?」
「僕にはあなたが約束を違える人のようには思えませんが?」
「約束?」

「そう。先程も聞いてもらった通りです。約束することで覚悟を僕は示します。僕を信頼出来るのなら、紬希さんはイエスと答えるだけでいい。僕は一度した約束は簡単には破りません」

 紬希はとても澄んだ瞳で貴堂を見て、考え込んでいた。
「今日、楽しかったですか?」
 貴堂がそう尋ねると紬希は笑顔になった。
「はい!」
「ではこういう時間をまた共有するのはいかがです?」

 紬希はふわりと頬を赤くして頷く。
「とても、嬉しいです」
「それをあなたとだけ、共有する、というのは?」

「その……いいんですか?」
「僕の方がお願いしているんです。こんな約束を重ねてゆくのが交際というものです。どうですか?」

 紬希にしてみれば今まで、こんな風に分かるように説明してくれるような人はいなかった。
 貴堂の説明は分かりやすくて、紬希にも納得ができるものだった。
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