パイロットは仕立て屋を甘く溺愛する
 翌日はオフだったけれど、次の日の国際線乗務の準備があり外出することは難しい。

 本当なら紬希の顔を見たいとも思っていたのだが、やはりペースを変えることは困難だと貴堂は感じる。
 むしろこんな風で交際なんて出来るのだろうか、といつも思うのだ。

 勤務を熟知しているはずの客室乗務員とも交際が続いた試しはないのに。

 愛おしい気持ちはある。
 大事にも思う。
 けれども、譲れないものもある。

 紬希とは福岡から帰ってきたときにメールをした。福岡では少しだけ時間があったので、空港内でお土産を買ったのだ。

 紬希はあまり出掛けることはないと言っていたから、喜ぶかも知れないと思って。

 今度会うときに持っていきますね、とメールしたらとても楽しみです! と返ってきた。

 自分はそんなメールだけのやり取りも嬉しい。それだけでも心が浮き立つように感じるけれど、紬希はどう思っているんだろうか。

 明日からの乗務は国際線であるし、現地でのステイがあるので、帰ってくるのは4日後だ。

 貴堂は携帯を手に取った。

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