見合いで契約婚した幼馴染が、何故か激しい執着愛を向けてくるのですが!
【第4章】

 相変わらずの生活はそれからも続いた。
 つまり、私が新居で一人暮らししているような、そんな生活が。

 二ヶ月、三ヶ月と経つうちに、私も、この生活が私たちには普通なのかもな、と思うようになってきた。平日はめったに顔を見ない、休日でも家にいることの少ない「夫」という存在を、ある意味では受け入れていたのだ。

 フェアルート商事と『クロケット』グループの提携事業の方はといえば、どうやらうまくいっているようだ。既存のレトルト商品に加え、新しい商品の開発も進んでいるらしく、フェアルートの広い販路に乗ったことで目論見通り売り上げは伸びているらしい。
 電話をかけてきた母が、父が毎日ご機嫌で、それはいいけどお酒の量が進んで困るのよ、と報告してくれた。

『で、あなたたちの方はどうなの。うまくいってる?』

 母の質問に、一瞬口ごもってしまう。けれど。

「うまくいってるわよ。喧嘩もしないし」

 嘘ではない範囲の事実を口にする。母は電話の向こうで『あら、そう』と安心したような声を出した。

『あなたたち、子供の頃はほんとに仲が良かったものね』
「──そうね」

 今はそうでもなさそうだけど、とは言えない。

『お父さんが、孫はまだかって気の早いこと言ってるわよ』
「お父さん……」
『まあそれはそれとして、近々うちに来れない? 結婚式以降会ってないでしょう、お父さんが顔を見たいって』
「……うーん、稔くんが土日も忙しいから、ちょっとわからない。相談して連絡する」
『一日でも休めないぐらい忙しいの? 大変ねえ』

 通話を終えた後、抑えられないため息を吐き出した。
 ごめんねお父さん、孫の顔は当分見せられそうにないわ……
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