サクラ、咲く
上げ膳据え膳



「なんで俺が居ない時に来るんだよ」


「翔樹が居ないとは知らなかった」


「チッ」


親子の会話なのに、物珍しさからか
視線が外せない


てか、いくら広い部屋だからって
男の人が四人も居るだけで圧迫感しか感じないんだけど


「じゃあ俺たちはこれで
咲羅ちゃんお大事に〜。あっ
良かったら夜はあっちで一緒にね」


ウインクでもしそうな勢いの
男性A改め、大魔王様の側近、上原透《うえはらとおる》さんは


二ノ組の“若”だという男性B改め、郡朝陽《こおりあさひ》さんを連れて出て行った


・・・えっと


上原さん・・・何故に大魔王様を残したっ


言わないけど


そんなことはお構いなしの翔樹は
大きなトレーをテーブルに置くと


「食べるか?」
と聞いてきた


・・・えっと


この状況に戸惑う私に


「琴が」


大魔王様が話しかけてきたんだけど
一声目から謎


「コトが?」
とりあえず聞いてみるつもりだったのに


「親父、“琴”が名前ってことすら知らねぇんだ
咲羅、琴ってのは母さんのことな」


翔樹が助け舟を出してくれた


「悪いな」


「いえ」


「琴が橘と一緒に立川の両親に詫びに行った」


「・・・っ」


驚き過ぎて言葉を失った


「ストーカーと怪我のことを説明して
家で預かることを了承してもらった」


「・・・、・・・」


「だから、気兼ねなく過ごすと良い」


「・・・はい」


「じゃあ」


大魔王様が部屋から出て行くと
漸く息が吐き出せた気がした


「大丈夫か」


「大丈夫じゃない」


「クッ」


「笑いごとじゃないわよ」


翔樹には普通かもしれないけど
視線を絡めているだけでジワリと身体が石になった気になる


それより・・・


うちの両親に挨拶に行ってくれたなんて


「良いお母さんだね」


「・・・そうか?」


「うん」


翔樹の言う通り見た目に反して
良い人ばかりなのかもしれない


「てか、腹減った」


「フフ、食べて良いよ」


「咲羅も一緒に食おうぜ
これ、二人分って持たされた」


そう言ってベッドから抱き上げられ
ソファに下ろされた

















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