極上男子短編集

本番

まさか自分が文化祭でもステージに立つことになるなんて思ってもいなかった。


しかも3年生最後の大舞台だ。


小道具係で終わるはずだった私は文化祭実行委員によって野外ステージ横にあるテント内へと引き込まれていた。


テント内にはすでに出場する女子3人が集まっていて、それぞれが真剣な表情でメークを行っていた。


「衣装はこの中から自由に選んでね」


そう言われた先には丈の短いドレスが何着も用意されていた。


しかしサイズはどれも小さくて、自分の体が入るのは心配になった。


美穂や有子なら余裕で着られるんだろうな。


そんなことを考えてメーク中の2人へチラリと視線を向ける。


2人は私が来たことに気が付いてもいないようで、熱心にメークをしている。


「ここ、空いてるよ」


実行委員の生徒がテントを出ていった後もぼーっと衣装を眺めていた私も、もうひとりの参加者が声をかけてきた。


たしか3年A組の生徒で、飯田さんという名字だった気がする。
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