独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで

【朝見送り出来なくてごめんなさい。お仕事頑張ってね】

文面を読んだ晴臣は口元を緩めた。

多分、基本的な休憩時間の十二時になるのを待って送って来たのだろう。瑠衣らしい気遣いだ。

【早く帰る為に頑張ってるよ。明日は休みだから今夜はゆっくり出来るな】

今夜も抱きたいと、希望をメッセージに込めたつもりだが瑠衣は気付いただろうか。

【ご飯つくって待ってるね】

文章の最後に可愛い熊の絵文字がついていた。普段の瑠衣のイメージとギャップがあり可愛い。ベッドへの誘いに気付いたかは謎のままだ。

(まあ気付いてなくても抱くけどな)

瑠衣とのやり取りで上機嫌な晴臣だったが、この後には憂鬱な仕事が待っている。

瀬尾への事情聴取は勤務時間内に行ってもよかったが、瑠衣の件などプライベートの面も多く含むため、会社近くのレストランの個室を取った。

一時間程しか時間はないが多分問題ないだろう。

晴臣は彼との交渉の切り札を手に入れている。

準備を整えレストランに向かうと、瀬尾は既に到着していて、窓から眺められる中庭の風景を興味深そうに眺めていた。

警戒しているだろうと予想したが、意外にも瀬尾は晴臣の顔を見ていつもの人懐っこそうな笑顔になった。

「ここ有名な店だよな。よく個室を取れたな」
「ああ。座ってくれ」
「オーダーはどうするんだ?」
「適当に頼んである」

コース料理を運んでこられると会話の妨げになるので、肉料理だけにした。
自分で選べないことを瀬尾は不満そうにしているが、そんな文句を言っていられるのも今だけだ。
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