独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで

手が空いた隙間時間にメッセージを送ってみたけれど、返信がないところも不安の一つだ。

落ち着かない気持ちのまま一日の予定をなんとかこなし急ぎ帰宅すると、瑠衣の姿は見当たらなかった。

（まさか……本当に実家に帰ったのか？）

愛想が尽きてしまったということなのだろうか。
絶望で目の前が暗くなる。

それでも直ぐに瑠衣の実家に向かおうとしたところ、タイミングよくスマートフォンが鳴った。

「瑠衣？」

表示を見て慌てて応答する。

「晴臣さん、メッセージくれたのに返信しなくてごめんなさい。今大丈夫？」

「あ、ああ。もちろん大丈夫。今どこにいるんだ？」

「今は外。同僚と飲んでるところ」

「は？」

え……家を出たんじゃなかったのか？

戸惑う晴臣に瑠衣が続ける。

「あの、那々と出かけるって伝えてあったよね？」

「あ、ああ。そうだったな」

そう言えば言われた気がするが、すっかり頭から抜け落ちていた。

（落ち着け、あせりすぎだ）

「晴臣さんはまだ仕事中？」

「いや、もう自宅だ」

「え？　食事は？」

瑠衣の声音から、晴臣の夕食を心配してくれているのが伝わって来た。

「適当にするから大丈夫。たまにはゆっくり飲んで来て」

彼女の気持ちが嬉しくて、ようやくほっとする。
穏やかな声で気遣う晴臣に、瑠衣は気まずそうな様子で答えた。