独占欲を秘めた御曹司が政略妻を再び愛に堕とすまで
「どう思われても結構ですが、私に関わるのは止めて下さい」

『嫌だと言ったら?』

瀬尾の声から苛立ちが伝わって来た。

「私の言葉を無視してしつこくするようなら、夫に報告します」

彼は晴臣と友人だと言っていたが、さすがに不倫の誘いをされたなんて言いつけられたら困るはず。

案の定瀬尾は初めて口ごもった。警告の効果があったのだと手ごたえを感じた瑠衣はそのまま通話を終わらせた。

もしまたかかって来ても出ないつもりで、スマホをバッグの中に突っ込む。

(最悪だった。瀬尾のことなんかで煩わされてる暇はないのに)

瑠衣は夫との関係で精いっぱいで、余裕なんて一切ないのだ。

それにしても瀬尾が晴臣に昔の関係を話してしまったのは痛い。

悪く言われているのは間違いないとして、晴臣がどう受け取ったのか分からないのが不安だった。

(そう言えば、晴臣さんも明日話があるって言ってた)

それは瀬尾の件なのだろうか。
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