あのね、君のことが好きなんだ
       ーー四月ーー

桜が舞う四月。
中学ニ年目となる春が訪れた。

中学校まで登校する間にある坂道。
その端にはズラッと桜の木が並んでいる。

「きれい……」

太陽の光を浴びてちらちらと舞う桜の花びらがなんとも言えないほど綺麗で思わず足を止めた。

うっとり見惚れていると急に

       びゅーーー

「きゃあっ」

強い風が吹いた。

強い風が吹いて驚いて一瞬目を閉じた。
開くとそこに広がっていたのは、視界いっぱいに広がる桜吹雪と、男の子がいた。

「ええ!?さ、桜の妖精!?」

私は驚いて後ろに一歩下がる。

「そうだ」

見たこともない男の子は笑顔でそういった。

でもよく見ると着ている服がうちの学校の制服だ。

「んん?」っと頭を傾げて彼の服を見ていたのだろうか。
男の子は「ははは」っと笑ってそんなわけないじゃん、お前と同じ学校の生徒だよ。っと言った。

「え?じゃあなんで突然現れたんですか?」

不自然に思って聞いてみた。

「突然じゃねえよ。お前がボーっとしてたじゃん」

うわ、見られてたか!!

恥ずかしくて顔を手で隠す。

絶対今顔赤くなってる。

突然頭に何かが触れた。顔を手で隠すのを止め、視線を前に向けると男の子が私の頭に手を伸ばしていた。

「ごめん。花びらついてたから」

「ほら」っと私の頭についてた花びらを見せてくる。

「ありがとう」

私は男の子の顔を見てお礼を言った。

「お、おお」

そう言って男の子は視線を私からそらす。

あれ?なんか男の子顔赤くなってない?
熱でも出たのかな?

「顔赤いですよ?大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫」
「そうですか?ならいいですけど……」

ん?今何時だ?なんか嫌な予感が……。

「あの今何時か分かります?」
「今?うーんと、7時56分」
「え!?もうこんな時間!?」

入学式の最終準備をするために早く来たのに意味がなくなってしまう。

「あ、あの。すみません、先行きます!」
「わかった」
「では」

私は坂道を走り始めた。
これが私の初恋だと気づいたのはちょっとあとの話。

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