愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)

「どうしてよ!? だって私達、兄妹なんかじゃないじゃない!」
もし仮にそうなのだとしても(・・・・・・・・・・・・・)、他人の目から見れば、私達は兄妹だ。禁忌以外のなにものでもない」

「そんなの、私の出生を明かせば……」
「そうしてリヒトシュライフェを、混乱に(おとしい)れるつもりか」
 冷たく問われ、シャーリィは目を見開いた。

「王女が本当は、王女ではなかった。王妃が国民を(あざむ)いていた。ルーディが本当は、この国の第二王子だった。……一体、どれほどの(さわ)ぎになると思う?お前が王家の娘でないとなれば、同じ七公爵家の娘を持つ親は、(だま)っていないだろう。正当に選定が行われていれば、お前ではなく自分の娘が宝玉姫に選ばれていたかも知れないのだから。王妃の信用は地に()ち、父上は(なげ)き悲しむだろう。ルーディは、それまで実の父母と信じ(した)ってきた者達から無理矢理引き離され、王宮に連れて来られる。この国は、滅茶苦茶(めちゃくちゃ)になるだろうな。内乱に発展するかもしれん。内乱だけで()めば良いが、下手をすればその機に乗じて隣国の侵略を受ける可能性もある」

「それは……」
 シャーリィは言葉を失った。

 真実を知って、自分のことだけでいっぱいいっぱいで、他のことを考える余裕がなかった。
 自分が出生の真実を受け入れれば、それで全てが()むような気がしていた。だが、現実はそれだけで済みはしないのだ。

「……分かっただろう?無理なのだ」
 静かに告げられ、だがシャーリィは、必死に首を横に振った。
「嘘よ。何か、方法があるはずだわ。何か……」

 ひとりごとのように()り返し、シャーリィはふっと思い出した。かつてアーベントがシャーリィに告げた言葉を。
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