愛され聖女は片恋を厭う(宝玉九姫の生存遊戯1)

「小鳥達よ!私を助けて!」

 シャーリィの叫びとともに、その珠――光の宝玉が、黄金の光を(はな)つ。それは一瞬のうちに、四方八方へ飛び散った。

 直後、中庭の木という木から、小鳥達が飛び出してくる。いや、中庭だけではない。中庭の外からも、次々と小鳥の大群が飛んでくる。
 小鳥達が向かう先は……シャーリィに今にも(おそ)()からんとする、一人の男。

 まるで蜂が敵に襲いかかるかのように、小鳥達は一斉(いっせい)に男に(むら)がり、その(くちばし)で男を攻撃した。

「うわあぁあああぁっ!? 」
 男は悲鳴を上げ、短剣を取り落とす。

 両腕を必死に振り回して小鳥達を追い払おうとするが、小鳥達はその腕を器用にかいくぐり、(なお)執拗(しつよう)に男を攻撃し続ける。
 シャーリィはその間にそっと男に近寄り、地に落ちていた短剣を拾い上げる。

「ありがとう、小鳥さん達。もういいわ」
 シャーリィが声を掛けた途端(とたん)、男を襲っていた小鳥達は一斉(いっせい)に飛び立ち、男を解放した。
 男はよろよろとその場に(ひざ)をつく。

 シャーリィは右手に短剣を、左手に光の宝玉を(かま)えたまま、男に対峙(たいじ)する。
 その視線を一瞬、ヴァイサーヴァルド伯爵の方へやってから、声を上げる。
 いつもの彼女とは違う、厳しく大人びた、迫力に満ちた声だった。

「……ヴァイサーヴァルド伯爵、並びにローターハウゼン子爵。何の(ゆえ)あって私に襲い掛かったのか、その理由(わけ)()べなさい!」
 男達は、叱られた子供のように、びくりと身を(すく)める。
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