夢見るだけじゃ終われない 〜恋と令嬢とカクテルと〜

 ――あっ。

 未経験の私にだってそれくらいの知識はある。
 彼は今、私を見て興奮してくれているのだ。

 そう考えると嬉しくて落ち着かなくて、心臓が早鐘を打つ。

「……本当だ、じっと見られると恥ずかしいもんだね」
「あっ、ごめんなさい」

 視線を逸らそうとする私の顔を、彼が両手で挟んで固定する。

「ふっ、興奮している俺を見せてもいいけど……キスをするときには目を閉じてくれたほうがいいかな」
「えっ?」

 彼の顔が近づいて、私は思わず目を閉じる。

 唇に柔らかいものが触れたと思うと一瞬で離れ、「口を開いて」と耳元で囁かれた。

 私はその声に導かれるように口を開ける。

 もう一度、今度はゆっくりと唇が押し当てられて、隙間から肉厚な舌が入ってきた。

 口内をぐるりと舐められ背筋が震える。
 下半身に甘い疼きが生まれだし、鼻にかかった声が出た。

「んっ……あ……っ」
「可愛いよ、茉莉。舌を絡めて」

 言われるまま夢中で舌を動かした。ペチャッと粘着質な音を立てながら2人の舌が絡みあう。

 ゆっくりと離れると、彼が私の耳朶を()み、首筋へと舌を這わせていく。

 鎖骨、そして胸の谷間へと移ると私の鼓動が速くなり、全身の血液が沸騰していく。

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