交際0日、冷徹御曹司に娶られて溺愛懐妊しました

宿泊はそこから六キロほど離れたホテルである。

道路に面した門から車で入ること数百メートル。森を切り裂いたような場所に佇むホテルは古城風の外観をしている。エントランスには神殿のような太い柱がいくつもあり、アイアン製の手すりが優雅な螺旋階段が吹き抜けの上に茉莉花たちを誘う。

着替えを済ませたあと、広いダイニングレストランで総勢七名が優雅にフレンチを楽しみ――もちろん悠生は離乳食だが、茉莉花は吉鷹と悠生と三人でスイートルームへ戻った。

アンティーク調の調度品がお姫様気分になるにはもってこい。一昨日ここに足を踏み入れたときには、吉鷹や悠生の存在も忘れて胸を躍らせ、部屋のあちこちを見て回った。

悠生はお昼寝もせずにはしゃいでいたため、夕食の途中から吉鷹の腕に抱かれて夢の中。起こすのがかわいそうになり、お風呂は明日の朝にしてひと足先にベッドに寝かせた。


「吉鷹さん、素敵な結婚式をプレゼントしてくれてありがとう」


リビングスペースのソファに座り、改めて吉鷹に伝える。
同じ人と二度も結婚式を挙げられる人なんてそうそういないだろう。
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